2025年12月21日日曜日

【SS】破滅への誘い【幻遊剣士】

 

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「ボクなら、お役に立てますよ」

空は、炎で赤く染まっていた。
かつては美しかった町が、今や見る影もない。何を間違えたのか、男は自答した。

ただ、欲しかっただけだ。
まるで赤子のように、見えるもの、触れるものを全て欲しがった。その結果、この町を手に入れた。そして、その欲望の結果、せっかく手に入れたものは全て灰になろうとしている。

「ああ、こんなところにいましたか」

顔をあげた。涼やかな声には覚えがある。

おまえは……。

もはや音にならない声がもれた。命も尽きようとしている。そんな男を見て、少年は瞳を輝かせる。

「ボクの言ったとおり、いい景色が見れたでしょう?」
あの日、何もなせぬままに朽ち果てようとしていた男に向けられた目と同じ笑みを少年は浮かべている。

男は、ようやく悟った。
あの日の笑顔は、天使の救いなどでは無く、破滅への誘いだったのだと。

【本編はこちらから】


2025年12月20日土曜日

【SS】ドラゴン【シルヴァランド物語】

 

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真っ赤な巨体で、口から火を吐いて……。

霊峰トラウゼ山。
そこに巣くう神魔七柱の一、ヘルドラが次の討伐対象だ。

(登山かぁ)

山頂、と聞いて雄輝はすぐに憂鬱な気分になる。クレアみたいに羽が生えていればな、と少し思う。しかし、すぐに思い直した。
そういえば、クライアスが言っていた。クレアは優雅に飛んでいるように見えて、必死に空中を走っているだけなのだ、と。

すっかり忘れていた。
クレアが普段使っている透明な足場を、実際に渡ったことがあるというのに。

「それで、そのヘルドラってのは、どんなやつなんだ?」

気を取り直して、雄輝は問う。その声に、クレアは嬉しそうに振り返った。雄輝が積極的になってくれているのが嬉しいようだ。

「あのですね、見た目は真っ赤でおっきなトカゲなんです」

クレアが身振り手振りを交えて、雄輝に説明する。うんうん、と頷いている雄輝の頭に一つの像ができあがってきた。

「それって、『ドラゴン』みたいなやつ?」
雄輝が思い浮かべたのは、ファンタジーを題材にしたゲームならおなじみのモンスターだった。クレアが一生懸命話していた羽を持つ巨大なトカゲで口から火を吹く怪物について、雄輝はそれしか想像できない。

それなのに。

「どらごん?」

クレアは口をポカンと開けて呆けていた。どうやらドラゴンという言葉が通じないらしい。

「その、どらごんが何なのかは分かんないんですけど、ヘルドラには鋭い牙があってですね……」

クレアは熱心に説明を続ける。しかし、どれだけ言葉を加えても雄輝の中に生まれたドラゴンのイメージが崩れることはない。むしろ、さらに強調されていく。

(言葉って便利なようで、不便なんだなー)

身振り手振りも大きく、一生懸命話すクレアをどこか冷めた目で見ながら、変なところで異世界を実感する雄輝であった。

【本編はこちらから】


2025年12月17日水曜日

寒い【星使いティンクル・ライツ】

 

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見ている方が寒い格好

近所の子どもが作ったのだろう。かなり立派な雪だるまが鎮座していた。

「きゃはは」
それを見つけたライツは、風で落ちてしまったバケツの代わりに座った。体を左右に揺らしながら、歌まで歌い出す。見るからにご機嫌だ。

そんな様子を洋介は信じられない様子で見ていた。

「ら、らいつ。おまえが寒さとか気にしないのは分かったけど、服装は変えてくれ」
見ている方が寒い。
洋介は震えながら、そう思った。

【本編はこちらからどうぞ】

想兼 ヒロ


【更新報告】「ユーダイくんって呼ぶね」「何でだよ」【ソウル・エコーズ】

 こんばんは。

本日もお疲れ様です。

「ソウル・エコーズ~精霊達への鎮魂歌~」の第4話となる『朱く燃える羽』を更新しました!

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これ、ユーダイくんの?

今回は、主人公の雄大(ゆうた)と、神谷澪(かみや みお)による「会話劇」がメインの回です。

▼ 本編はこちらから読めます

澪の「意外な一面」と二人の距離感

これまでちょっと冷たい雰囲気を漂わせていた澪ですが、今回は彼女の「年相応の素顔」や「ちょっと強引なマイペースさ」が見どころです。

個人的に気に入っているのは、父親のことを「パパ」と呼んでいるのが発覚するシーンや、雄大の名前の読み方を頑なに訂正しないシーンです。

「俺の名前、雄大って書いてユウタって読むんだよ」
(中略)
「へぇ~」
神谷はあまり興味なさげに返事をして。
「まぁ、でも、あたしはユーダイくんって呼ぶね」
「何でだよ」

第4話「朱く燃える羽」

訂正しても「あたしにとってはユーダイくんだから」で押し通す澪と、それに振り回されてツッコミを入れる雄大。 シリアスな状況下ですが、この二人の漫才のような掛け合いを書くのはとても楽しかったです。

澪は一見冷めた態度をとっていますが、わざわざ不穏な人影を確認しに戻ったり、倒れていた雄大を心配していたりと、実は「お人好し」な性格が見え隠れしています。
そんなギャップを楽しんでもらえたら嬉しいです。

日常会話から急転、ラストの「違和感」

そんな和やかな(?)会話で終わるかと思いきや、ラストでは物語が一気に不穏な方向へ動き出します。

唐突に「バンザイして」と命令され、わけもわからず手を上げた雄大の脇から出てきたのは――。

「朱い羽」が描かれた謎のカード。

楽しげな会話シーンから、一気に非日常へと引き戻される落差を意識しました。
あのカードはいったい何なのか?
なぜ雄大にくっついていたのか?
物語の鍵となるアイテムが登場し、ここから事態は加速していきます。

ぜひ、二人の会話とラストの展開を楽しんでいただければ幸いです!

読んでいただけると嬉しいです。
評価いただけると、もっと嬉しいです。

それでは、また会いましょう。

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想兼 ヒロ

【SS】予想外の赤【サマー・メモリーズ】

  似合わない……なんで!? 「あ、あれ?」  鏡に映る私は、目を見開いて固まっていた。 頬はカッと熱いし、変な汗まで出てきた。そこに映るのは、予想外の姿。思わず目をそらしたくなるほどの不出来。  お小遣い握りしめて買ってきた赤リップ。期待していたからこそ、なんかガッカリだな。 ...