2024年6月25日火曜日

【雑談】空をかけるモグラの物語【好きな本】

新装版 星モグラサンジの伝説
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 こんにちは。

 今日は童話「星モグラサンジの伝説」について話したいと思います。

 自分が今まで読んだ本で一番好きなのは、と聞かれたら迷いなくこれです。


伝説のモグラ「サンジ」のことを人間に知ってもらいたい。


 このお話は、作者が家の庭に現れたモグラから聞いたお話です。

 やわらかい文体である本文と、エッセイ調の文体である作者とモグラの交流が交互に描かれ、読む人に「物語」ではなく、「伝説」なのだと思わせてくれます。


自分が「モグラ」であることは頭に無い


 とにかく主人公のサンジはまっすぐです。

 何にまっすぐかというと「食欲」

 食べたい、という動機に彼がモグラであるという壁は存在しません。


岩も砕くし、空も飛ぶし、水にも潜る。


 「モグラだから無理」だと皆が思うようなことを、ひたすら努力を重ねて実現させてしまうサンジのパワーに圧倒されます。

 それは伝説だわ。


 最後には人知れず、世界も救ってしまうサンジ。

 もし、読んだことがない方は手に取ってみてください。

2024年6月24日月曜日

【Twitch】こんな肉食獣、軍隊必要でしょ【ペーパーマリオRPG】

 

ペーパーマリオRPG、2日目

 積みゲー解消のため、Twitchでゲーム配信やってます。

 今回は、ステージ1のボス、ゴンババ退治をメインに進めました。


マジで殺してくるの?ここのドラゴン

 ゴンババ城に転がっているカメの骨。

「ああ、カロンね。あとで起き上がってくるんでしょ?」

 ↑この考え、後々の展開を見ると合ってはいましたが中には本当のカメが 混ざっているみたいで。

 ノコタロウのイベントでは普通に騙されました。お父さん、生きてると思ってたけど、死んでなくてよかった。

 でも、ここの場面、ギャグっぽくしてごまかしてるけど、食われて死んでるカメは存在するんだよなぁ、と思うと死の気配に震える。


災厄のドラゴン、ゴンババ襲来!

 ようやく最上階。

 ゴンババ、立体的でずるくない? こっちはペラペラなのに。

 事前に弱点を知っていたので、そんなに困ることはありませんでした。

 ただ観客が食われたのには驚いたなぁ。

 ほんとに死んでるし、キノピオ達……。

 この世界、見た目以上に殺伐としている。


恋を知るAI

 ピーチ姫視点に切り替わり。敵組織がやっと判明しました。

 そんななか、ピーチ姫を見ていた敵のコンピューターにノイズが走る。どうやら「恋」を知った模様。

 ……ドラえもん映画のバギーちゃんを思い出したのは、自分だけではないはず。


ふしぎの森の大樹

 ゴロツキタウンの地下から、小さな生き物に連れられてステージ2です。

 思ったより不思議な光景でおどろきました。

 さて、どんな冒険が待っているのやら……。


 次回は水曜日朝の予定です。

 よかったらよろしくお願いいたします。

2024年6月23日日曜日

【報告】文学フリマ大阪12、申込完了しました!

  こんばんは。


 文学フリマ大阪12、申し込み完了しました!

 昨年は初参加とあって、準備が全くうまくいかなかったので、今年は万全で臨みたいと思っています。

 昨年の写真。他の地域でも思ったけど、スタッフさんのイラストかわいいよね?


 一番キツかったのが、せっかく銀行で両替した小銭をまるごと忘れたこと。今年はしない。


 昨年頒布した本の続きは必ず持って行きます。


 願いは流星とともに(1) 星使い ティンクル・ライツ


 よろしくお願いします。

2024年6月22日土曜日

【小説】黄金の右目と真っ黒紳士【短編】

 彼女の右目に映るもの


「あなたの悪事、私の目が全て見通しよっ!」


 指差した相手は見事に動揺していた。


 あんなにうろたえてたら自分が犯人だって言ってるようなものじゃない?

 でも、無理もないかな。


「な、何を言ってるの。黄色い目をしたお嬢さん」

 そうそう目が怖いんだよね。でも、黄色いのは右目だけ……いや、片方だけの方が目立つのか。

「証拠はあるの?」


「えっと」

 あれ、何だっけ。台詞忘れた。


「それはあの子が言ってたから」

 口に出しかけて飲み込んだ。視界の片隅でブンブンと首を横に振っている彼の姿が目に入ったから。


 あぁ、はいはい。これは禁句ね、分かってます。


「あなたが毒を捨てた場所。案内してあげるって言ったら、どう?」

 あの慌てよう見てたら台詞を思い出せた。よかった、よかった。


「二十点」

 意気揚々の私に彼は冷や水をぶっかけてきた。

「き、厳しい」


 彼は夏だというのに、重っ苦しい真っ黒なスーツを着ていた。


「嬢ちゃん、芝居の癖が強すぎ。最後まで話せたのは奇跡だな」

 う~、それは分かってる。私だって、私相手に話を聞こうとは思わないもん。怪しすぎる。

「でも、相手は最初から身構えていた。それは嬢ちゃんが地道に活動してきた成果だぜ」

「それが二十点分?」

 彼は満足げに頷いているが、私は不満だ。それじゃあ、今日の分の点数は零点ということじゃない。


 どうやら私の不満が伝わったようで、彼はにやりと笑う。


「嬢ちゃん、あそこで自分の秘密を喋ったら零点で終わらない。分かってるよな」

「分かってる」

 本当かぁ、と彼は疑っている。確かに口を滑らせたのは私だけど、そんなに信用無いかなぁ。


――いいか、嬢ちゃん。その目は切り札(ジョーカー)だ。使う時は気をつけろ。下手に話すと敵をつくる。俺みたいな物好き、そうそういないからな。


 優(ゆう)さん、あなたに言われたことなんだから覚えてるに決まってるじゃない。


 事務所の扉を開けて、大げさにため息をついた。


「はぁ。遠かったなぁ。パパには反対されたけど、やっぱり免許取ろうかな」

「嬢ちゃんが、運転?」

「……そこ、驚くところ?」


 私は、どんと勢いよく座り込んだ。その様子が淑女(レディ)らしくない、と彼がたしなめてくる。


 正直、うるさい。

 彼のことは無視しよう。聞こえないふりは慣れている。


 無視する私相手に静かになった彼が、また話しかけてきた。

「それで、坊主には報告できたのか」

 その話なら、してあげてもいい。……あげてもいいって、我ながら何様よね。


「あの子、私が見つけた時に、もう消えかけてたからなぁ」

 あの子とは自殺に見せかけて殺された犠牲者。

「一応話したけど、私の声が届いたかどうか」

 そして、有力な情報提供者だ。


 私の右目だけが黄色いのは、生まれつきじゃない。幼い頃に高熱を出して、気がついたら黄金に染まっていたんだ。

 そこからは地獄だった。何で、地獄かって?


 想像してみて。

 目が覚めて、最初に見る顔がママじゃなくて、ドロドロに顔の溶けたおじさんだったりしたら。正気でいられると思う?


 私の右目は、この世にいないものを見ることができる。


 あの子も私が会った時、すでに死んでいた。だから、事件解決しても無力感を感じてしまう。私のしていることは結局、自己満足じゃないのって。


「そう落ち込みなさんな」

 そんな私の表情に気づいて、優さんが笑って声をかけてきた。

「嬢ちゃんが気づいて、皆の心に刻みつけた。それは価値がある」

 彼に讃たたえられると悪い気はしない。しないけど、さっき低い点数をつけられたことを根に持っているので反撃しよう。


「優さん、真剣味がないのよ。だって、うさんくさいもの」

「なにを。こんな紳士をつかまえて、うさんくさいって」

「だったら、もっとすっきりとした服装に着替えなさいな」


 俺には俺のポリシーがある、と叫んでいる。そのポリシー、何度も聞いてるんだって。私が毎回気になるのは、喪服もかねて、ってトコ。

「誰が相手か教えなさいよ、それなら」

 小さく呟いた。

 

 私はずっと、その相手を探し続けている。本人に聞ければ早いのに、それができないのがもどかしい。

 でも、試してみようか。ふと、思い立って、優さんに向き合った。


「優さん、その嬢ちゃんっての止めてよ。私、いくつになったと思う?」

 最初に会ってから何年経ったろう。

「嬢ちゃんが、一人前の淑女(レディ)になったら考えてやるよ」

 それでも変わらない、嘘くさい笑顔を添えて彼は同じ返答を繰り返す。

「その時は、嬢ちゃんに似合う花でも買ってやるからさ」


 ここだ。

 激しくなった動悸に息が苦しくなる。全てが壊れそうで、言いたくない。


「花を買うって。そんな日、もう二度と来ないじゃない」


 それでも私は、決定的な一言を言ってやった。

「ん、何か言ったか」

 途端に脱力。やっぱりね。そうなると思った。


 ふぅ、と大きく息を吐いて右目を右手で隠してみる。


 瞬間、音が消えた。そして、そこにあった優さんの姿も消え去った。左目に映るのは、生活感のない殺風景な事務所の風景。

 その空虚な空間を見ていると、不安でたまらなくなる。私は慌てて、右手をどかした。右目の視界が涙でぼやけたのは、きっと気のせいだ。


「どうした、嬢ちゃん」

 優さんの姿を見て、安心した。


 安心?


 我ながら、矛盾している。彼がいなくなることを望んで、姿が無いと動揺するんだから。


 そう、彼も、すでにこの世にいない。他の人と違って、存在がハッキリしすぎてるから時々忘れそうになるのだけれども。


――いいか、嬢ちゃん。


 閉じた目に映るのはいつもの黒ではなく、一面の朱。

 私を庇かばって刺された傷から、流れ出る鮮血。


 パパにお願いして、彼の遺品を整理しようと事務所に訪れたとき、「よぉ、嬢ちゃん」と変わらぬ笑顔で出迎えてくれた時の驚きを、今も忘れることはできない。


 あれから、私も大人と言える年齢になった。なのに、彼が消える気配がない。

 長く留まりすぎて原型を無くし、悪意の塊かたまりになってしまった人を何度も見ている。そうなると、もう私ではどうにもできない。


 だから、私は決めた。

 この人が教えてくれた右目の使い方を駆使して、この人が抱えている無念が何なのか探って、バシッと解決して送り出してやるんだって。


 まぁ、バシッとできる時が今のところ皆無だけど。

「嬢ちゃんは、まだまだ手がかかる」

 子ども扱いする彼にはイラッとくる。でも、実際一人ではどうにもできないことが多い。


 本当なら、優さんは自分で事件を解決したいはずだ。でも、私以外に話しかけても通じないもんだから、私を影から支えているつもりになってるらしい。

 死者は存在に不都合な真実を、ねじ曲げる。それは知ってるけど、ずいぶんご都合主義じゃない?


 そんなわけで、お化けの見える黄金の右目しか取り柄のない私と、その相棒を気取っている真っ黒な死者という奇妙な関係が誕生した。


 行き先は不透明。

「まぁ、いいか」

 長引きそうだけれど、仕方ない。これは私にとって、優さんへのお礼と、贖罪しょくざいだ。どれだけかかってもいい。


 電話が鳴っている。

「はい、松木探偵事務所です」

 看板は、彼の生前から変えていない。こうしていれば、優さん目当ての客がやってくる。


『……あれ、女の子?』

 今回もそのようだ。きっと、これを繰り返していけば優さんの未練へとたどり着けるはず。

「私にお任せを!」


 さて、今回は何を見ることになるのやら。まぁ、優さんと一緒なら大丈夫かな、とりあえず。

2024年6月21日金曜日

【雑談】創作の原点は「ゴジラ死す」【創作】

  こんにちは。

 ちょっと思いついたので、自身の創作について話したいと思います。


『日記』は苦手

 自分が創作らしきものを初めて文章として書いたのは小学生の時の日記でした。宿題で出るやつです。

 これが、まぁ、苦手でした。書くことが無くなるんです。「何を書けばいいんだろう」と、悩む時間が長くなって遊びの時間が消えるんですね。同じの書けばいいのに、自分で縛りプレイ。

 自分のブログ・note・SNSを見てもらうと分かるんですが、今でも自分の日常を文章にするのは苦手だったりします。特別なことが起こった記録、みたいに考えてるんでしょうね。「これ食べた」とかでいいのに。


そうだ、お話書こう

 そこで、どんな思考回路でその結論に至ったのか、覚えていないんですが、だったら全部空想で書いてやろうと当時の自分は思ったんですね。そこで題材にしたのが、画像をお借りしたゴジラです。

 ゴジラ、大好きなんですけど当時映画やってなかったんです。ゴジラが死んじゃって(世代がバレる)

 そこで、復活した初代ゴジラと新しく誕生したゴジラが戦うお話を考えて毎日の日記代わりに書いてました。


読者は先生一人

 まぁ、こんなもの、今から考えたら宿題の意義に反してますよね。先生からしたら、普段の生徒の様子が知りたいのに「変なの書いてきた!」ですよ。

 ただ、それで「止めろ」と言わず、ほんの一言だけでも毎回感想をくれるので嬉しかったのは覚えてます。結局、最後までは書けなかったかと思うんですが、それでも長く続いたのは先生の反応のおかげです。


noteを始めて

 普段の小説もそうですが、反応がもらえないと書く気力が一気に削がれてしまうという欠点が自分にあります。公募のためにコツコツ書ける方を本当に尊敬しています。

 ブログもそうですね。反応がないまま書き続けることができなくて(PVはあるのに)中断する時期が長くて続きませんでした。

 その点、noteは反応もらいやすくて良いですね。ちょっと反応があれば、次も書こうと思える。良いツールだと思います。

 なんでもっと早く手を出さなかったんだろうw


 これからも、何か思いついたことを書いていきます。

 苦手でも、苦手なりに、ね。


2024年6月20日木曜日

【小説】生き人形(リビングドール)は夢を見る【短編】


祖父の遺言

 変態で偏屈。いくら名声を得ようと、我が愛すべき祖父の人間的な評価はそんなものだ。

 ぼんやりと空に祖父との思い出を描いてみる。


「否定はしないけどさ」


 利明としあきが思い出すのは、初めて知ったサンタクロースという存在を、興奮気味に話したときのこと。確か、枕元に靴下を置いておくと、子どもが欲しいものをプレゼントしてくれるって。そこばかり強調して伝えたのだ。

 今とは違って素直な子供時代。それが真実だと心の底から信じていた。それを聞いた祖父の心中は穏やかではなかったろう。


 クリスマス当日。言われた通りに靴下を準備して、利明はワクワクと胸を高鳴らせて眠りについた。ちなみに、他にクリスマスらしいことは何一つしていない。

 クリスマスだけでない。幼少期、何か特別な行事をした記憶も無い。皆から「かわいそうに」と言われるけれども、当の本人は何も気にしてはいなかった。

 楽しいと感じることも、今から思えば他の子と相当ズレていたのだ。親がいないことを揶揄やゆされたって、どこ吹く風だ。


 あの祖父あって、利明がいる。彼も、相当変わっている。


 ああ、それでクリスマスの話だ。そこに戻ろう。次の日の朝、利明は何を見たと思う?


「靴下には裸の女の子が一人」


 ひと目で人形と分かるが、それはとても精巧にできていた。他の人形のように持ち歩けば、周囲から怪訝けげんな目で見られるだろう。今の利明くらいの年齢だったら、警察に呼び止められるかもしれない。それぐらい、リアルなものであった。

 当時、それを手にした利明は幼すぎて性に目覚めていなかった。彼は漠然と「サンタの趣味は爺じいちゃんと一緒か」と思ったものだ。


「寒そうだったから、布テープをぐるぐる巻いたんだっけ」

 ミイラ女の完成である。それを持って無邪気に遊ぶ彼を、なんとも言えない表情で見ていた祖父の表情を同時に思い出した。


 そう、その人形を靴下に突っ込んだのは祖父だ。彼は人形作りを生業としていた。老人は老人なりに、サンタのことを嬉々ききとして語る利明のことを想おもって行動してくれたのだ。


 そんな祖父の作品は、世界中で称賛されていた。

 「リビングドール」、つまりは「生き人形」。芸術家として、ちょっとした有名人だった。


「もうちょっと早く知ってればなぁ」

 あの人形も高く売れたのに。そんな短絡的な理由ではない。第一、経済面ではかなり支援してくれた。不自由さを感じたことはない。

 無論、今は多少先行き不透明ではあるが、それも大学卒業までは大丈夫である目途が立っている。


 そう、彼の後悔は別のところにある。

「もうちょっと早く知ってれば……絶対にあんなこと、言わなかったのに」

 利明は一度、祖父に怒りをぶつけたことがある。祖父の仕事を気にはしていなかったが、理解していなかった。そのつけが、利明が思春期だったころに襲ってくる。


 当時、気になっていた女の子がいた。その子が祖父の作品を見て、言ったのだ。

 気持ち悪い、と。

 とても、冷たい目だった。それが、成長で不安定になっていた利明に突き刺さった。そして、生まれた衝動のまま、祖父に叫んでしまった。


――今すぐ、そんな仕事やめちまえっ!

 祖父は、ただ黙って聞いていた。そこに張り合いがなくなったのと、後ろめたさを感じて利明はそれ以上何も言えなくなった。しかし、自分は悪くないと思い込んで謝ることはしなかったのだった。


(なんで、すぐに謝らなかったんだろう。馬鹿な俺)

 その時のことを、今でもずっと悔やんでいる。そう、もう、謝ることもできない。


「さて、と」


 たどり着いた実家は埃ほこりっぽかった。帰省の度に掃除していたのに、すぐに汚れる。

「あんなに元気だったのに。ポックリと逝っちゃってさぁ」

 大学を選べなかった彼のせいだが、祖父の死に目に会えなかった。だから、未いまだに亡くなった実感がない。

 廊下の奥から歩いてくるのではないか。微かすかな気配を感じて振り返るも、そこには誰もいない。


 あまりにも突然の死で利明は整理できていない。葬式で涙が出なかったときは、自分に怒りすら生まれた。

 しかし、こうして誰もいない家を歩くとちゃんと「さみしい」と感じている。祖父の痕跡を無意識に探す自分に安心を覚えた。


「ここは入れてもらえなかったからな」

 彼は、生前祖父が仕事場にしていた蔵の前に立っていた。今日の目的地はここだ。


 遺産の整理とか、知り合いの弁護士に任せている。あの人付き合いのない祖父が名指しで遺言を託した相手だ。利明も少し話しただけで信頼を覚えている。

 そんな彼に、「ここはあなただけしか入れてはいけないと言われています」と伝えられたら。今までどこか恐ろしくて近づくことすらなかった蔵だろうが、開けるしかないだろう。


「うわっ」

 思わず声をあげた。掃除なんてしたことがなかったのだろう。大量の塵ちりが舞う。


 久しぶりの光が中に入る。そこには何体か、作りかけの人形があった。

「生きて、ないな。これは」

 完成品しか見たことがなかった利明は、それを「生き人形リビングドール」と認識できなかった。

「何というか、モノ?」

 芸術品ではあるが、そこには魂がない。そんな批評家みたいなコメントが思いついた。


「仕上げが凄すごいんだろうな」

 文字通り、祖父は魂を込めていたのだろう。ここで作業する祖父の姿を想像しながら歩いていった。


 一番奥にたどりつく。机の上に、大きな桐きりの箱が横になって置かれていた。

「……」

 思わず息をのむ。それには、異質な存在感があった。


「開いてる」

 本来なら触れてはいけないものな気がする。しかし、蓋ふたが開き気味で放置されていると好奇心を刺激されて仕方ない。


「俺に開けろって言い残してたんだ。さすがに触っていけないもの置いてないだろ」

 どこか後ろめたい気持ちもあったが、ズレている蓋に手をかけ、上にゆっくりと持ち上げた。


 その瞬間、彼の目は驚きで大きく見開かれる。

「あ、あ、え?」

 動揺で鼓動が早くなる。背中に冷たいものが走った。いくつか、危機管理的な行動が思いつく。


 しかし、その目まぐるしい思考が過ぎ去った後。

「あ。ああ、これ人形か」

 利明は安堵あんどの息を吐いた。


 見た目は十代前半の女の子。全く乱れずに伸びている長い黒髪に、真ん丸の瞳。体を包む和服も清らかだった。その肌の艶が、あまりにも生々しくて事件を疑ってしまったほどである。


 少々不気味だけれども、おそらく利明の記憶に残る祖父の作品のどれもがこれを超えられない。最高傑作だ。

 これこそ、まさに「生き人形リビングドール」。


「ん?」

 その人形が抱えるように持っている本が気になった。

「ごめんね」

 人形が大事そうに持っているように見えたから、思わず謝ってしまう。かなりの年代物なそれを持ち上げた時、挟まっていた紙がハラリと落ちた。


「とっとっと」

 空中で捕まえようとするが、取り逃して地面まで落ちてしまった。しゃがみこんで拾おうとした。

 だから、決定的な瞬間を見逃してしまったのだ。


「もうっ! 利通としみちさんっ。掃除できないのなら、せめてしっかり閉めておいてくださいっ!!」

「はいっ!?」

 いきなり背中から大声で怒鳴られた。心臓が飛び出そうになる。


 恐る恐る振り返ると、声の主が目をゴシゴシとこすっている。

「ゴミがこんなに。私の目、傷つかなくても痛いんですよ」

 ようやく痛みがひいたのか。それは顔を上げて、利明をじっと見つめていた。


 彼はその間、あまりに不可思議な出来事を前に黙って立ち尽くしていた。


「あれ、利通さん。ちょっと若返りました?」

「俺は利通じゃねぇ。利明だ」


 あまりにも緊張感のない声に引きずられるように自分の名前を答えてしまった。


 それが比喩ではなく文字通りの生きている人形、椿つばきとの出会いであった。


 衝撃の出会いの後、利明は古びた本の達筆すぎる字と格闘していた。分かったのは人形の作り方が書かれているということ。しかし、内容がオカルト過ぎて理解が追いつかない。


「死者の復活? 反魂の術? 人間の骨を原料って」

「信じられません?」

「いや、おまえ見てたら疑うところの方が少ないというか」


 椿は利明の横にちょこんと座っている。寝ている時は人間と見間違うほどだったが、こうして動いている姿を見ると、滲み出てくる違和感が彼女を人形だと伝えてくる。


 一番の違和感は。

(こいつ、瞬まばたきを全くしないんだよな)


 本当であれば気味が悪い存在。そんな彼女が横にいても利明が平気な理由。それは本に挟まれた祖父の手紙を見たからだ。


『利明へ。どうか、椿を人間にしてやってくれ』


 簡潔すぎる。そんな短い言葉が利明の心を打った。

 祖父が、彼に、何か頼み事をする。そんなことは祖父との思い出の中に一つも無かったから。


「私は、流行病はやりやまいで死んだ子どもだったそうです」


 椿は自分のことを伝聞調で語っていた。

 長く存在している間に、記憶はところどころすり減ってしまった。今は直近のことしか思い出せないらしい。

 それだけ、長い間、この家に受け継がれて、ずっと生き続けてきたのだ。


「何で、俺はおまえを一度も見てないんだ?」

「それは、私から眠らせてもらいましたので」


 祖父が祖母と結婚した頃、椿は自ら箱の中に戻った。

――こんな偏屈者はきっとすぐに一人になる。そしたら、また一緒に人間になる方法を探そう。

 祖父と、そんな約束して。


 約束。その言葉を聞いて、利明の胸は痛みを感じた。

「俺のせいだな。約束、守れなかったの」

 俊明の母、祖父の娘がようやく結婚できて、家を離れた。だが、すぐに交通事故で亡くなってしまったのだ。生まれたばかりの利明を残して。

 祖父は両親の代わりに利明をここまで育ててくれた。その分、祖父は約束に使える時間をなくしてしまったのだ。


 きっと、祖父は利明を大学に送り出す時はすでに死期を悟っていたのだろう。利明はそう思った。

 だから、遺言をしっかりしていたし、椿を封じていた本と一緒に手紙を隠しておいた。これを開けるであろう利明に向けて。


 そして、託したのだ。自らが叶えてあげられなかった約束を。利明に。

(ポックリ死んだと思ってたのは俺だけ。なんて、間抜けな話だ)


 だからだろう。祖父が手紙に残したあの短い一言に、相当な無念を感じるのは。


 横に座っている椿を見る。

「やれるだけやってみるよ。それでいい?」

「はいっ」

 椿は嬉うれしそうに微笑ほほえんだ。やはり、その笑い方は少し変で、ぎこちない。


 何をしていいかも分からない。何もできずに、椿を落胆させるだけなのかもしれない。

「とりあえず、風呂入るか? なんか……かび臭いし」

「乙女に言う言葉じゃないですよ。利明さん」

 膨らまない頬ほおを膨らませようとする椿。そんな彼女の、本当に笑った顔を見てみたと利明は思ってしまっている。


(今はそれだけで十分だ)

 祖父の願いと、このちょっとした自分の願いがあれば前に進んでいける。


 そうやって、この「生き人形リビングドール」が見る夢に付き合ってみるのも悪くない。そう、利明は思っていた。

2024年6月19日水曜日

【日記】「庵野秀明展」に行ってきました



希有な才能、ここにあり

 今日は愛知県名古屋市、金山駅近くで開催されている「庵野秀明展」に行ってきました。

 庵野監督といえば、自分の中ではやはりエヴァの監督としての印象が強いです。あと近年ではシンがつく特撮映画で活躍されていますね。

 自分の一押しはシン・ウルトラマンです。


「監督」はこうしてできあがった

 最初は庵野秀明を構成するもの、というテーマで監督が幼い頃から触れてきた作品群が並んでいました。

 ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマト……このあとのコーナーでも触れられていましたが、自分の作品に、この時初めて触れた原体験を再現したいとの想いが詰まってるみたいですね。


天才

 「作り手」として目覚めた頃の作品が展示されていましたが、圧倒されました。その熱量に。

 特に学生時代につくりあげた特撮作品は思わず「アオイホノオ」の島本先生を思い出しました。ああ、この才能が近くにいたら……思わず叫びたくはなるよなぁ。


書き込みに感じる熱

 とにかく細部までこだわり抜いた作品だとあらためて感じました。全力投球過ぎて、有名な話ですけどエヴァの時に苦しんだんですよね。

 あと、苦しんだのは映画のスタッフかw


 概ね満足な展示会でした。

 今世で監督の作品に出会えて幸せです。


 おみやげでゴジラ第二形態金のシャチホコを買いました。


 かわいい……のか?

【SS】予想外の赤【サマー・メモリーズ】

  似合わない……なんで!? 「あ、あれ?」  鏡に映る私は、目を見開いて固まっていた。 頬はカッと熱いし、変な汗まで出てきた。そこに映るのは、予想外の姿。思わず目をそらしたくなるほどの不出来。  お小遣い握りしめて買ってきた赤リップ。期待していたからこそ、なんかガッカリだな。 ...