2024年7月1日月曜日

【創作】妖精族の話【雑談】


 こんにちは。

 自創作で出てくる妖精族の話をしますね(唐突)


星使い ティンクル・ライツ ~願いは流星とともに~(想兼 ヒロ) - カクヨム
「流れる星のキセキをここに!」

そいつらがメインのお話はこちら。


全体の話


 人間よりは幻想に近く、精霊よりは現実に近い存在。

 その曖昧さから、妖精族の中でも仲がいい種族と仲が悪い種族もある。人間にかなり近くて家庭すら持っている者もいれば、人には知覚できない精霊に近すぎる存在もいる。

 細やかではあるが、おおざっぱに言うと基本的に「光」か「闇」のどちらに近いかで性質が決まる。

 精霊に近いので人よりノーリスクで精霊魔法を使うことができることがメリット。逆にデメリットは同じく精霊に近いために環境の変化にすこぶる弱い。


 ここからは、実際に創作に登場させたことのある妖精族の話。


光妖精

 手のひらサイズ。2対の翅をもつ。か弱い存在であるが、精霊に近いために他の妖精族には難しい術も容易にこなす。

 よく言えば高潔、悪く言えば潔癖。「闇」の存在は躍起になって消し去ろうとし、「光」と「闇」が中途半端に混じった者には軽蔑の眼差しを送る純血主義者が多い。

 身内以外は毛嫌いするが、一回身内に取り込んだ者に対しては非常に強い絆を結ぶ。

 要は、ツンデレ極まれり。


星妖精


 前述の「星使いティンクル・ライツ」の主人公、ライツが属する妖精族。

 外見は「光」に近く、内面は「闇」に近い。幼体と成体が完全に分かれていて、幼体は良くも悪くも色々なことを学習し吸収することで、成体となって完成する。成体の翅の色は個人によって違い、その者の力の特性を示す。

 かつて、この種族から生まれた特異個体は「星使い」と呼ばれ、どの属性も十二分に使いこなすことで妖精界全体の危機を救い、伝説として語られている。


闇妖精


 まさに混沌。姿形も色々、性格も色々。共通することは自由を好み、秩序を嫌うこと。

 唯一従うのは自身より強い力を持つ者が示す理だけ。ただその強さの基準も個体それぞれ。

 人に良くも悪くも近く、人に災厄を振りまく存在もいれば、気に入って祝福を与える個体もいる。どちらも、自分が楽しんでいるだけだが。


 こんな感じ。

 また、機会があれば紹介します。


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2024年6月30日日曜日

【創作】「神妖装姫」オープニングテーマ【歌詞】

 


 こんにちは。

 自分の創作はキャラクター先行なので、キャラを動かしながら物語を作っていきます。その過程で、いつも自分の創作がアニメ化された時のオープニング映像を妄想したりします。


 皆、するよね? え、しない?


 以下は、「神妖装姫」と名付けた未発表のお話で考えたオープニングアニメで流れる歌をイメージした歌詞です。

 

 考えている時が一番楽しい。

 ちゃんと書けるようになるのはいつだろうか……。


想い、炎となって

この胸に残る傷 癒える日がくると

根拠の無い希望が 今は救いで

痛みごと握りしめた決意の拳

汚れのない瞳が 悪意を貫く


伸ばした手は きっと届きはしない

それでも、まだ 諦めるには早すぎるから


朱き血潮が途絶える前に

全てをつかみ救いたい

誰にも言えない悲しみ秘めて

孤独な空に夢を描いた

鮮やかに夜を染め上げる

この手の温もり 離さないから


人から聞く思い出 振り返ろうとも

消えてしまった足跡 辿ることできず

嘆きたい感情さえ残っていない

だから、「今」を無くしたくないよ


「おかえり」と私を 迎えてくれる人を

失うこと それが一番怖いから


握った拳をただ真っ直ぐに

想いの全てをぶつけていく

君と出会った奇跡を噛みしめて

何度倒れ傷ついても

瞳は絶えず輝いて

ここにいるよ、と笑い続ける


私の炎が消えそうなとき

君の笑顔を思い出すよ

あの日託された想いは

私の中で今も燃え続けている


朱き血潮が途絶える前に

全てをつかみ救いたい

誰にも言えない悲しみ秘めて

孤独な空に夢を描いた

鮮やかに夜を染め上げる

この手の温もり 離さないから


きっと、明日を 掴んでみせるから


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2024年6月29日土曜日

【随筆】背番号55への憧れ【野球】


 55という数字

 プロ野球、巨人伝説の選手、王貞治。世界のホームラン王と呼ばれた彼が記録した年間55本の本塁打。長い間、その記録を超える人がいませんでした。

 そのため、プロ野球選手として背番号55を背負う選手にはその記録を超えてほしいという願いが込められてました。


 ……まぁ、それも昔のこと。

 今の記録はバレンティン選手の年間60本塁打。


 それでも背番号55は特別な番号。個人の勝手な思い入れですが、強打者が背負うからこそふさわしい番号。気にせず「空いてるから」という理由で投手に渡す監督には「ん~」と唸ったものです。


自分にとっての背番号55

 自分は幼いころ、背番号55にすさまじく強い憧れを抱いていました。当時の図工で作った作品には、背番号55の選手を題材にしたものが溢れていました。

 自分達の世代でいえば、背番号55は海を渡ったヤンキースの四番打者が一番有名でしょう。ただ自分が描く55番の選手には青が多く使われていました。


 故郷の英雄に憧れて海を渡り、ブルーのユニフォームを身にまとった台湾の青年。

 自分の少年時代は、彼への憧れ一色でした。


 そのきっかけは、初めて見に行ったプロ野球。

 巨人ファンの父に連れられて行ったプロ野球はよく分からなかった子どもは、目の前に飛び込んだ彼の本塁打にすっかり魅了されてしまいました。

 慕っていた祖母も巨人ファンなのに、そんな感じで自分は中日ドラゴンズのファンとなって今に至ります。


後悔、先に立たず

 そんな彼が旅立って、もう10年近くになります。

 自分が今も後悔しているのが、彼の晩年、地元で店長をしていたお店に足を運ばなかったことです。

 あんなに好きだったのに。いつか行こうと思いながら、行けなかった。

 これを書いているときにも、苦しい思いになります。


後悔しないように生きるのは難しい

 そう考えると、この出来事以外にも「なぜ、しなかったのか」と後悔することは多いです。未来を予期することは本当に難しい。

 それでも。

 今の自分は、実は奇跡の上に成り立っているのではないか。


 そう、思いながら日々を生きていきたい。

 そんな風に思っています。


大豊 王貞治に憧れて日本にやってきた裸足の台湾野球少年
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2024年6月28日金曜日

【小説】別れた道の交差点【短編】

 ☆ こちらと同じ世界観です ☆



ここから始まる物語


 野球というスポーツは何となく知っていた。しかし、その子は自分の知る野球とはどこか違っていて、かなり輝いて見えた。

 体が沈み込み、全くのよどみのない投球フォームから繰り出される白球。打席に立てば、自分と同じくらい小さいというのに高々と打球を打ち上げ、外野の頭を越していく。


 一人だけ、格が違っていた。いつしか、目が離せなくなり試合が終わるまでフェンスに釘付けになっていた。


――おまえ、ずっと見てたよな。


 その少年に声をかけられる。恥ずかしさに顔を紅くしながらも、何とか頷いた。


――よかったら、一緒に野球をやろうぜ!


 その日、差し出された手。

 小さかったのに、とても大きかったことを今でも鮮明に思い出せる。


『三番、センター佐原くん』


「はっ」


 場内のアナウンスに呼ばれて、慌てて立ち上がる。どうやら考え事に夢中になっていたようだ。

 目の前で、じっと見つめる少年が一人。見つめる、というよりは睨んでいた。


「大丈夫かよ、おまえ」

「大丈夫だよ、僕は」


 相手投手の球筋など、一言二言言葉を交わして打席に向かう。ただ、教えてくれた彼には悪いが大海(ひろみ)は何も聞いていなかった。

 その言葉は、彼が予想していた範疇を超えていなかったからだ。


 審判に会釈をして打席に立つ。バットをぐるっと大きく回して右打席に構えた。そこで初めて、相手投手と目が合う。


「ああ」

 思わず声をあげた。そこにいたのは、まさしく彼であった。


 瀬川陸。

 大海の幼なじみで、野球の師匠。共に歩み、その背中を追いかけた。


(まさか、こんな日が来るなんて)


 あの日、途絶えてしまった道の先。

 その先が、今日に繋がっているなんて思いもしなかった。


 一球目。

 一度、高く足を上げてから沈み込む。左投げのアンダースロー。それだけでも、球界で希有(けう)な存在である。

 しかし、それだけでない。


 胸元への速球を見逃した。ボール。

 中央辺りだろうと目星を付けた球が高めに外れる。球が浮き上がる、なんてのはありえないことなのだが彼の球威がその錯覚を可能にしている。

 マウンドにかするぐらい低いところから、真っ直ぐに放り込まれた球は下から跳ね上がってくるように見える。


(ああ、ほんとに投げれるようになったんだ)

 しかし、大海はそんな投球を静かに見送ると別のところで感動を覚えていた。


 中学最後の試合となったあの日。

 大海はマウンドでうずくまりベンチへと下がっていく陸を、ただ黙って見送るしか無かった。


 肘の故障。それが、思い描いていた未来を壊した。


 大海は声をかけられていた強豪校へと入学した。しかし、同時に誘われていた陸は高校野球に未練を持たないように野球部のない高校に進学したのだ。


 少なくとも野球では二度と交わらないだろう。二人はそう思っていた。


 チラリとベンチを見る。

 訝しげな表情でこちらを見ている少年と目が合った。


 陸との対戦の時に、嬉しそうな大海に苦言を呈した人間だ。そんなに憧れてる相手を打てるわけがないと。


――憧れがスタートで何が悪い。僕は、それでここまでやってきたんだ。


 大海はそうやって、その意見を突っぱねた。実際、一年生から主軸を任されている実力があるのだから、相手は黙るしかない。

 そのせいで、未だに関係がぎこちない。


(でも、そうだな。打たないと)


 スコアボードを見る。相手に得点が一つ入っている。観客の誰もが予想していなかった先制点を、大海達は許した。

 そして、大海の前の打者は二三振。流れを変えなくてはいけない。


 しかし、陸の球はなかなか捕らえきれず、大海は追い込まれた。

 勝負の一球。外角低めへの速球。


(いや)


 踏み込んでそれを打ちにいった大海のバットから逃げるように球は沈み込む。シンカー。これではバットは届かない、届いたとしても凡打のはずだった。


――おまえ、体大きいんだからもっと振り回せばいいのに。


 幼い頃の陸の助言。それを可能にする軸の強さ。体は傾いているのに、バットの速度は変わらない。


 快音を残し、振り抜いた。


 ふわっと、打ち上がった打球。しかし、なかなか落ちてこない。フェンス際まで追っかけていった選手の目に、スタンドに跳び込む白球が映った。


「よし」

 打ったあと、体勢を崩して走り出すのが遅れた大海は打球の行方を確認して小さく拳を握る。

 これで同点。この試合は、まだまだ始まったばかりだ。


「いや、あんな球をホームランにするなよ」

 陸は目が合った大海にニコッと微笑まれて苦笑いを浮かべる。

「いいぜ、とことんやりあおうってんだな」

 受けて立つ。陸は静かに闘志を燃やし、ベンチで祝福されている幼なじみの姿に口端を歪める。


 あの日、終わったかと思った道の先。

 この交差点から、二人の新しい道が始まるのであった。


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2024年6月27日木曜日

【小説】甘き幻想に「サヨナラ」を【短編】

 灰かぶりの章


 そろそろ寝よう。そう促しても、娘は首を縦には振らなかった。どうしても気になるのだ。

 ハッピーエンドの、その先が。


「お姫様はその後、どうなったかって? 」

 父は苦笑いを浮かべながら、愛する愛娘の機嫌を損ねないように再び本棚へと向かっていった。


「そんなのを知ってどうするだい? 期待したような話じゃ無いかもしれないのに」

 そして、一冊の本を取り出した。見るからに古そうな装丁の、歴史を感じさせるものだ。


 いつからそこにあったのだろう。娘は、この本棚が大好きだ。それなのに、一度も目にした覚えが無い。

 あんなに格好いい本ならひと目見ただけで覚えるのに。娘は不思議そうに首を傾げた。


「そんなに知りたいのなら教えてあげるよ。でも、面白いとは限らないぞ」

 父は本を開いて語りだした。


 それは、とある姫様のその後のお話。

 


 ガラスの靴によって見いだされた妃の瞳は、暗く濁っていた。

「……退屈」

 彼女は真っ白な天井を眺めてつぶやく。


「何か、面白いことはないかしら」


 城内の生活は、きらびやかで外から見ていれば綺麗なものの、中に入ってみると堅苦しくて仕方がない。あれだけ愛を誓いあった王子も、最近は実父との政権争いに躍起になって会いに来てもくれない。

 あの舞踏会での逢瀬(おうせ)も、遠い記憶になってしまった。


 そして、友人らしい友人もいない。自分がここに来た経緯が経緯だから、仕える者も妬みや僻ひがみをもって自分と接しているのを妃はありありと分かってしまう。


 これでは、まだ『灰かぶり』と揶揄やゆされて、直接いじめられていた時の方がましだったのではないか、とまで思ってしまうのだ。

 あの時は持ってもらっていた関心すら、今の彼女にはない。


「ああ、そうそう」


 昔、自分が呼ばれていた名を思い出すのと同時に、姉や継母達の絶望に青ざめる顔も頭に浮かんできた。


 あれは痛快であった、と。


 自分達の悪行を考えれば招待されるわけがない結婚式にのこのことやってきて。貴族連中の目に止まりたかったのか、身の丈に合わないドレスで着飾って。


 それで大勢の人の前で、彼女らがこれまで妃にしてきたことを、断罪してやったのだ。

 周囲の人間は、ここぞとばかりに継母達を口悪く罵った。


 その後のことは、風の噂で聞いた。継母は、あまりの非難に心砕け、自ら命を絶ったという。こんなに面白いことはない、と妃は思う。

(……あれ?)

 そこで、妃は違和感に首を傾げた。何か、思考の片隅にモヤッとした塊ができているのだ。

 その歪みは小さいものの、確かな質量を持って心に残り続ける。


 果たして、自分は、人の不幸を面白いと思える人間だったのであろうか。確か、もっと、小さなことに幸福を見出す人間じゃなかっただろうか。


(きっと、ここが退屈すぎるからよね)


 しかし、その疑問は、もっと強い声によってかき消された。

 あれだけ長い間、耐えたのだ。その相手が死んだことくらい、喜んだっていいはずだ、と。


(そうよ、まだ足りないわ)

 ニヤッと笑う。下卑(げび)た笑みだ。そんな妃の顔に、昔の面影は残っていない。


「とりあえず、姉さん達を雇ってあげようかしら。誰とも結婚できず、露頭に迷ってるらしいし。そうだ、あんなに履きたがってたガラスの靴を履かせてあげましょう。そうね、かかとを切り落としでもしたら入るわよ」


 愉快な気持ちになってきた妃は、思いついたことを実行に移そうと立ち上がった。


「そんなの止めといたら?」


 そこに、彼女はいた。


「だ、誰!?」


 いつのまに、部屋に入ったのか。椅子に腰掛け、背もたれに体重を預けながら少女は妃を見つめていた。

 そのぼんやりとした瞳に感情の色はない。灰色がかった目には、生気すら感じられなかった。


 エプロンドレスを身に着けているが、こんな子は城の使用人として見たことがない。そもそも、こんな幼い子は妃の周辺に一人もいない。


「本当のあんたは、あたしみたいに狂いたくはないだろうしさ」


 狂っている、と彼女は言う。確かに幼子だというのに、堂々とした立ち振舞は妃の思考をおかしくさせる。彼女がここにいること、それそのものが狂っているように感じた。


 そうだ、異質な存在なのだ。自分にとっては異物なのだ。


 それならば、排除するしかあるまい。


「無礼者! ここをどこだと思っている。すぐに人を呼んで、牢屋にでも行ってもらうわ」

 権力を振りかざし、妃は少女を威圧しようとする。


「ふ~ん、そうくるんだ」

 しかし、少女は動じない。表情も変えず、目の色も変えず、ただただ妃を見つめている灰色の瞳。


「そう。あんた、あたしの言霊(ことだま)が効かないくらいに毒されちゃってるんだ。じゃあ、仕方ないよね」


 すっと、右手を上げる少女。その手首を、宙でくるりと回した。


 刹那、妃の横を風が通り抜けた。

「えっ」

 妃は絶句する。その途端、ふっと糸が切れたように彼女は昏倒した。


「があっ」


 代わりに妃の背中から声が聞こえた。胸から息と一緒に吐き出されたようなこもった声だ。女性のようで、男性のよう。そして、若くもあり、年老いてもいる。


「貴様……、なぜ私が見えている!?」

 そんな、様々な人の声が混じった音が、少女に対して驚きを伝えている。


 妃の背後にいたもの。それは、白い鳥であった。

 しかし、白かったのは先程まで。今はどす黒く変色し、その体さえも変化させて人を思わせる姿に変貌している。

 その顔にあたる部分は影になって見えてこない。しかし、少女の灰色の眼はその姿をしっかりと捉えていた。


「同業者。それしかないでしょ」


 抑揚のない声で少女は答え、エプロンドレスの裾をひらりと翻ひるがえして立ち上がった。

「さぁ、その子から離れて。嫌だって言うなら、もう一発いっとく?」

 彼女は右手にキラリときらめく銀色の得物を握っていた。それは影に突き刺さったものと同じものである。


 少女が手にしているのはいわゆるバターナイフと呼ばれる代物、当然刃物ではない。しかし、影にしっかりと突き刺さっている。じくじくと、本来感じないはずの「痛み」を影に伝えていく。


「貴様、貴様も『魔女』か!?」

 魔女、という単語に今までピクリとも動かなかった少女の眉が額に寄る。


 魔女、それは災厄の存在。その名は様々な語られ方をしているが、こと少女の中で定義は決まっている。


「ええ。あんたは、そうね、壊すことが幸福(ハッピー) ってとこかな。その子に許容量を超す幸福(ハッピー)を与えてから、壊す。うん、質(たち)が悪い」


 魔女とは、人智を超えた魔法を扱う者。そして、同時に、とあるものに執着的な喜びを見出す者だ。

 その喜びは、少なくとも大衆の秩序を乱すもの。それ故、どの土地でも魔女は災厄の存在と呼ばれるのだ。


「その子、もうほとんど魔女になってるじゃない。間に合って良かった」


 そして、魔女にはもう一つ厄介な特質がある。それは、己の仲間を増やそうとすることだ。対象者を絶望させ、他の者の絶望を糧とする新たな魔女へと変貌させる。

「ほんと、質たちが悪い」

 今は、糸が切れた人形のように倒れ込む妃。少女の前に対峙している魔女は、彼女を毒牙にかけ、新たな魔女にしようとしていた。


 魔女とはこの世界を破滅へと導いていく、人の心に巣食う伝染病のようなものだ、と少女は認識している。


「そうだ、私は魔女のエラ。貴様は何だ、他の魔女の邪魔をする魔女など聞いたことがない」

 あと少しで、幸福な終わりハッピーエンドを迎えた者を絶望に叩き落とすことができたのに。この目の前の小さな魔女に、逆に幸福感を吹き飛ばされた。

 エラは表情が分からないというのに、声に怒りが混ざっているのが明らかであった。


「そう、本当に聞いたことない?」

 エラとは対象的に少女の声の調子は平坦なままだ。


 じりっ、と少女はエラとの距離をつめる。

「別にいいけど。有名になりたいわけじゃない。あんたらに警戒されるのは、あたしにとって不幸(アンハッピー)なの」


 バターナイフを再び少女はエラに向かって投げつける。エラは、それをゆらりと右にぶれて避ける。しかし、それは少女の思惑通りの行動であった。


「あたしの幸福(ハッピー)はね」


 少女の灰色の眼が金色に光り、彼女の表情が初めて変化する。

 エラはその顔を、酷く醜いものだと思った。


 少女の感情は、愉悦(ゆえつ)だ。

 この状況、少女は楽しくてしかたない。歯を見せ、口を歪ませる彼女は足元の絨毯を蹴り飛ばす。


「あんたらみたいな魔女を、み~んな食い破ることよっ!」


 回避に意識を回したエラの虚をついて、一気に少女はその距離をつめた。


 少女はちらりと妃を見る。別にエラが彼女を盾にしようと、少女は気にしない。妃を助けたくもあるが、優先順位がはっきりとしていた。

 エラもそれが分かっているから、先程まであれだけ執着していた妃を視界の外に置いている。本能的に危機を察したエラは、この場から離脱しようと空間を歪ませた。


 しかし、少女の左手が消えかけようとしたエラの存在ごと掴み取った。


「だ~め、おとなしく食われなさいな」

 ぎりぎりと、強く締め上げる。少女は、エラの口にあたる部分を握りつぶそうと強く圧をかけていた。

「ぐ、ぐ」

 くぐもった息が漏れる音がする。


 そこで、少女はもう一度倒れている妃を見る。その間も、左手の力は緩めない。いや、確認したことで、さらに力が増している。


「幸福な終わり(ハッピーエンド)だろうが、悲しき終わり(サッドエンド)だろうが、残念な終わり(バッドエンド)だったとしても、そのお話はその人のもの。他の者が壊していいものじゃない。特に、この子のような幸福な終わり(ハッピーエンド)は譲れない」


 空いた右手で、少女は自らの腹をなでている。


 少女が思い出すのは深く暗い森。その奥で会った一人の魔女に、少女は狂わされた。

 魔女に騙され、彼女の求めるままに、唯一愛してくれていた存在を食してしまった時、少女は魔女になった。


「ね、ヘンゼル。あなたも、そう思うでしょ?」

 そこにいるはずの、存在を感じた時、少女はかつての己と同じ表情で微笑んだ。


 少女が口にした名前で、エラは思い出した。

「まさか、貴様、『魔女殺し』のグレ……」


「『壊れた幻想は夜の淵で眠る(グッナイ、フェアリーテイル)』」

 少女が口にした言霊と共に、エラは虚ろな体ごと、少女の手によって握りつぶされてしまった。


 その後、しばらく眠ったままだった妃が目覚めるまで少女は側にいた。そして、意識を取り戻した妃が最初に口にしたのは謝罪の言葉だった。


「私、お母様が亡くなったこと、なんであんなに嬉しそうに……」


 そんな妃を、少女は再び感情のない瞳で見つめている。


 少女は妃が眠っている間、少しだけ記憶を覗き込んだ。その結果、妃の継母は、彼女が嘆くような人物ではないと認識している。

(あたしが、両親に期待していないせいか)

 その点を抜いてみても、あんな継母の死を悲しめるのだ。少女が思っているよりも、妃は幸福ハッピーを見つけ出す才がありそうだ。


「まぁ、いいや。魔女もいなくなったし、あたしも退散するかな」

 まだ腹は満たされない。きっと、これからもずっと満たされることはないのだろう。


 少女は愛する者を屠(ほふ)った絶望を糧に魔女となった。その時、感じていた怒りが、魔女化によって転じたことで幸福(ハッピー)の源泉となる。

 それは、己自身への怒り。なぜ、こんなことになったのかと自身を責める憤(いきどお)り。自分が魔女となった時、その対象は魔女そのものになった。


 だから、常に飢えている。このうえは、全ての魔女を食い、そして最後に己を食うまで止まることはない。


「……あれ、あの子は?」

 妃が気付いた時、もう、そこに少女の姿は跡形もなくなっていたのであった。


「ねぇ、その子はどうなったの?」


 娘はらんらんと目を輝かせている。残酷な部分を抜いて話したのが悪かったのか、単純に冒険譚のように感じてしまったらしい。

「はい、今日のお話はここまで!」

 父は失態を反省し、無理やり、本を閉じた。


「ちえっ」


 娘はベッドの中で目を閉じる。自分の物語の日付を進めるために。


 願わくば、それが幸福な終わり(ハッピーエンド)であるように。父は、我が子の寝顔に向けて祈るのであった。


☆ Kindleで小説出しています。良かったら、読んでください。 ☆

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2024年6月26日水曜日

【Twitch】敵の工作センスは小学生並み【ペーパーマリオRPG】

 ペーパーマリオRPG、3日目

 Twitchで積みゲー解消をしています。



ふしぎの森の大樹

 今回はふしぎの森の大樹を攻略しました。

 元舞台女優、クラウダを仲間にして敵に制圧されかけている大樹の中をプニ達を引き連れながら進みます。

 道中、色々なしかけがあり、昔はここに進んだ文明があったのではと想像できます。


出撃、バッテンダーロボ

 今回で敵組織がガッツリと出てきます。

 そして、敵幹部のペケダーとの決戦はまさかのロボット。


 ……夏休みの工作かな?

 そこそこ苦労しましたが、力押ししました。


ジャンプを何とかしたい

 道中のジャンプアクションが一番の鬼門です。

 これを何とかしないと先に進めない……。



 次回は6/30の予定です。

 よかったら遊びに来てください。


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2024年6月25日火曜日

【雑談】空をかけるモグラの物語【好きな本】

新装版 星モグラサンジの伝説
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 こんにちは。

 今日は童話「星モグラサンジの伝説」について話したいと思います。

 自分が今まで読んだ本で一番好きなのは、と聞かれたら迷いなくこれです。


伝説のモグラ「サンジ」のことを人間に知ってもらいたい。


 このお話は、作者が家の庭に現れたモグラから聞いたお話です。

 やわらかい文体である本文と、エッセイ調の文体である作者とモグラの交流が交互に描かれ、読む人に「物語」ではなく、「伝説」なのだと思わせてくれます。


自分が「モグラ」であることは頭に無い


 とにかく主人公のサンジはまっすぐです。

 何にまっすぐかというと「食欲」

 食べたい、という動機に彼がモグラであるという壁は存在しません。


岩も砕くし、空も飛ぶし、水にも潜る。


 「モグラだから無理」だと皆が思うようなことを、ひたすら努力を重ねて実現させてしまうサンジのパワーに圧倒されます。

 それは伝説だわ。


 最後には人知れず、世界も救ってしまうサンジ。

 もし、読んだことがない方は手に取ってみてください。

【SS】予想外の赤【サマー・メモリーズ】

  似合わない……なんで!? 「あ、あれ?」  鏡に映る私は、目を見開いて固まっていた。 頬はカッと熱いし、変な汗まで出てきた。そこに映るのは、予想外の姿。思わず目をそらしたくなるほどの不出来。  お小遣い握りしめて買ってきた赤リップ。期待していたからこそ、なんかガッカリだな。 ...