2026年1月1日木曜日
2025年12月30日火曜日
【SS】初雪観測【星使いティンクル・ライツ】

人混みを縫うように歩いた。皆が忙しそうに、通り過ぎていく。
「こんにちは」
声をかけても反応がない。ロォルのことなど、そこにいないものとして通り過ぎていく。
「……」
ロォルの足は止まった。慣れては来たが、時々寂しさを感じることがある。兄の言う通り、今の時代に自分を認識できる者は稀なのだろう。
擬態した姿なら、人間が視認できることをロォルは知っている。ここで化身したら、どんな騒ぎになるのだろうか。そんな破滅的な考えが、頭をよぎった。
「するわけないですけどね」
鳥の姿のまま元に戻れず、鬱々とした日々を過ごしたロォルは必要な時以外は鳥の姿になる気はない。
そのとき、頬に冷たさが走った。
「あっ」
見上げると、ちらちらと雪が降りてきていた。
久しぶりに見た。故郷の島にはよく降っていたが。
「……うん、がんばろ」
故郷を思い出したら、一緒に兄の顔を思い出した。この空の続くどこかで、自分と同じように頑張っているはずの兄の顔を思い出したら、元気が出てきた。
そんな兄に負けないように。
心なしか浮かれた足取りで、ロォルは再び人の波の中へ飛び込んでいった。
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星使い ティンクル・ライツ ~願いは流星とともに~/想兼 ヒロ - カクヨム
想兼 ヒロ
2025年12月28日日曜日
【SS】側にいてくれたから【星使いティンクル・ライツ】

「まいご?」
ライツが首を傾げると、黄色いふわふわも同じように首を傾げた。
ひよこはライツが近づいても逃げようとしない。むしろ、興味津々といった様子でくちばしをくっつけてくる。
「ははは、くすぐったい」
柔らかい羽毛がライツの肌をくすぐった。
「だいじょうぶ。きっと、見つけてくれるから」
ひよこの横に腰掛けたライツは、満面の笑みでそう言った。
自分も迷子になったとき、不安で仕方がなかった。自分が元の世界に戻れないことに気づいたとき、涙が止まらなかった。
そのとき、包んでくれた暖かい腕。側にいてくれた人が笑ってくれたからこそ、ライツはくじけずにすんだ。
今度はライツの番だ。
「♪~」
ライツは歌い出す。彼女の歌声は不思議な響きをもって、青い空へと広がった。いつしか、ひよこは心地よさで寝入ってしまっている。
そんな彼女の声に導かれてやってきた友人が、ひよこの持ち主を探して奮闘するのは、また別のお話。
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想兼 ヒロ
2025年12月26日金曜日
【SS】黒は死者に祈る色【星使いティンクル・ライツ】

人の手が入らなくなってから、どれぐらいの年月が経っているのだろうか。美しかったであろう教会は、ところどころが朽ちてしまっていた。
「憐れなものだな」
信者に手入れされなくなった偶像は、元の形をとどめていない。信心を集めることのできなくなった者の末路がそこにある。
かつては敬虔な信者だった彼女も、少し思うことがある。
しかし、彼女は信じることを止めた。信じたところで、何も返してくれないだけでなく、過酷な運命を押しつけてくるのだから。
神はいない。そう思った方が楽だった。
「……」
彼女は指をパチンと鳴らす。刹那、彼女の周囲は闇に包まれ、背中にあった羽が隠れてしまった。代わりに身にまとうのは、黒い喪服。
――私では、あなたを幸せにできないから。
全てを憎んだ。人の悪意に傷つけられ、壊すことを望んだ。
しかし、あの日偶然が生んだ出会いが彼女の乾きを潤した。ようやく知れた母の姿。
(それでも、私はあなたと一緒にいたかった)
神を信じていなくとも。
最後まで自分のことを案じていた母を思うくらいはいいだろう。
彼女は目を閉じ、静かに祈ったのだった。
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