
――ちょっと持っててくれ!
慌てた様子の風船配りにそう言われたのは30分くらい前になるだろうか。
洋介は大量の風船を手に、途方に暮れていた。すぐに戻る、と言われたが彼の言うすぐと洋介の認識には齟齬があったようだ。
「いつになったら戻ってくるんだろ?」
手を離してしまったら全てが台無しになってしまうプレッシャーと戦いながら洋介は立ち尽くしていた。
せっかく近場でイベントがあるからと足を伸ばしたのに、何もできないまま時間だけが過ぎていく。
「ねえ、お母さん。あれ」
近くを通った子どもが、羨ましそうに洋介を見る。
そこで思い出した。
(そういえば、昔は風船がたくさんあったら飛べるって思ってたなぁ)
空を飛ぶことに憧れていた幼少時の自分を思い出して、洋介の心は温かくなる。
ぼんやりと、そんなことを上を見ながら考えていたら風船が揺れた。
「ばぁ」
風船が外に跳ねる。その隙間から、ライツが顔を出した。
「何してんだよ、おまえ」
呆れ気味な洋介とは対照的に、ライツはとても楽しそうである。
「ねぇ、ねぇ。これ、ライツよりも強いよ」
ライツが下へと押そうとするも、風船はその弾力と浮力で押し返す。そんな攻防を嬉々として繰り返していた。
「まぁ、おまえが楽しいんだったら、いいけど」
ここからさらに三十分ほど、洋介は大量の風船をもつはめになった。
ただ、思ったよりも退屈しなかったのはライツが側で笑っていたからだろう。
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プロローグ
星使い ティンクル・ライツ ~願いは流星とともに~/想兼 ヒロ - カクヨム 想兼 ヒロ
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