2026年1月8日木曜日

【SS】世界を遮断する魔法【サマー・メモリーズ】

 

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私だけの聖域

窓をうつ雨音に、私は顔をしかめた。

「ああ」

これは、だめだ。

私は鞄からプレイヤーを取り出した。年季の入ったそれは、金属製なのに温かみすら感じる。私にとっての、お守りの一つ。
チープなイヤホンをプラグに差し込んだ。両の耳を塞いだ後に、ボタンを押した。

「ふぅ」

流れてきた曲が耳になじんだ。流行りの曲は分からない。幼い頃から、何度も聞いてきた曲しか、このプレイヤーには入っていない。
それが、とても心地よかった。

一人になると、心が騒ぐときがある。何か、せきたててくるように。私を、非難するように。心に生まれた、もやのようなものが私を包む。外の音、全てが攻撃してくるかのような錯覚を覚える。
そんなとき、私はこうして外界から離れることを選ぶのだ。

このイヤホンは、魔法のように世界を遮断してくれる。

ざわついていた心が静かになっていく。
雨音も微かに、窓の外の景色は美しく流れていく。

「……ええ、頑張りましょう。せっかく、日本に帰ってきたのだから」

静かになった、もう一人の私に話しかけた。
目的地まで、あと十五分。私は私に向き合うことにした。

誰にも邪魔されない。馴染みの曲に包まれた聖域の中で。

【本編はこちらから】
第1話 夏眠暁を覚えず
サマー・メモリーズ~モノクロームの水平線~/想兼 ヒロ - カクヨム

想兼 ヒロ


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