
あれ、ここって俺の家だったよな。
そんな錯覚を覚えるほど、そいつは我が物顔で居座っていた。ソファーにうつ伏せに寝そべって、おそらくお気に入りの動画を見ているのだ。
こうやって、俺が近くに立っていても気づきもしない。どうやら、そうとう熱中しているようだ。
無防備だよな……。俺は頭に浮かんだ考えを首を振って振り払った。
「ふふっ」
時折、笑い声が漏れる。楽しそうで何より。ただ、もうそろそろ場所を空けてくれないだろうか。
あんまりリビングにいない俺だけど、今日は見たい番組があるんだ。
スウェット姿で足をパタパタさせ、完全に一人の世界に入っていた。
集中しすぎると、周り見えなくなるからな、こいつ。まぁ、俺は人のこと言えないけど。たぶん、こいつに言わせれば俺の方が酷い。
実際、こいつの侵入に気づかずに部屋で作業してたもんな、俺。こいつのことだから、挨拶くらいはして入ってきてるだろうし。
「おい」
「あっ」
声をかけられたのに驚いて、静谷はスマホをソファに落とした。
「あ、ようやく降りてきた」
こっちを振り返った静谷は、悪びれもせずににっこりと笑った。
「遅いよ、待ちくたびれた」
静谷はくるりと仰向けになる。
「今日って、あんたが前に言ってた特番の日でしょ。一緒に見よ」
そんな約束、してないんだけどな。いい加減、アポを取るという行為を覚えてほしい。
まぁ、でも、結局何も言えなかった。こいつが遠慮しだしたら寂しいのは確かだから。
【本編はこちらから】第1話 夏眠暁を覚えず
サマー・メモリーズ~モノクロームの水平線~/想兼 ヒロ - カクヨム
想兼 ヒロ
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